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旅行記ー草津温泉ー

遅めの雪が降り、やっと積もりだした1月下旬、草津温泉に足を伸ばした。東京からはアクセスが良いとは言い難いが、わざわざ足を運ぶ価値は十分にある温泉である。

 

 雪がしんしんと降っているなか、バスターミナルから、まずは湯畑に向かう。お土産や飲食店、旅館などが並ぶ少し急な坂道をおりると、すぐに広場に突き当たる。湯畑がぽっかりと口を開け、湯けむりがもうもうと立ちこめている。町に入ったときに感じた硫黄の香りは、ここから湯気となって町中に広がっているのだろう。湯畑を取り囲むようにお店がずらりと並び、湯畑を背後に記念写真をとる観光客が沢山おり、活気にあふれている。黄色とも緑とも言える不思議な色をした湯花が底にたまった湯畑は、絶えず湯が湧き出て、木の柵で区切られた段差をつたいながら、どんどん下方に流れていく。最後には少し段差がある所から瀧のように湯が勢い良く流れ落ちている。この光景は不思議でありながら、わくわくする。ただ湯の温度を下げることと湯花を採取するために、これだけ大きな装置が使われ、しかもそこを中心に人々の生活が存在しているのだから、他の場所では絶対お目にかかれない光景だ。

ひなびた温泉街が多い中、草津温泉がこれだけ活況なのはやはり温泉の泉質がいいのと、湯畑という象徴と共に木造作りの湯宿が立ち並び、古くから続く温泉情緒を感じることができるからだと思う。

草津温泉の泉質とその効能は昔から全国に名を轟かせていて、あの十返舎一九の「東海道中膝栗毛」の続編、「続膝栗毛」にも登場する。その頃はみんな温泉の効能にあやかろうと、何日間もかけてわざわざ草津まで来たそうだ。

草津の歴史は、721年に行基という僧侶がはじめこの地に温泉を発見した所から始まるとされている。

その後、一旦草津の温泉は人々に忘れ去られていたが、鎌倉時代に、源頼朝が狩りをしたときにこの温泉を発見し、その案内をした人物に「湯本」という姓を与え、草津温泉の管理をさせたと言われている。これが鎌倉時代初期なので、1200年頃である。十返舎一九が生きたのは江戸時代なので、600年後にこの地に来たということになる。

続膝栗毛には、草津温泉はこう案内されている。

上毛の国草津は、昔養老年中、行基菩薩のひらき給う温泉とかや。まことに海内無双の霊湯にして、諸病に験やること、あまねく人のしるところなれば、遠近の旅客ここに入りつどいて、湯宿の繁昌いうばかりなく、中にも湯本安兵衛、黒岩忠右衛門など、ことに家居花麗をつくし、風流の貴客絶えず。

                 上州草津温泉道中続膝栗毛十編下冊

この湯本安兵衛は、源頼朝から管理をまかされた湯本である。湯本家の本家は湯本幸宗の時に、断絶したが、分家である湯本安兵衛が引き継いだそうである。

また、続膝栗毛にはその当時人気だった瀧湯と共同湯の名前も記載されていて

湯壺あまたある中に、薬師の瀧湯天狗の瀧湯というが、ことに應験ありとて浴する人おびただし。

この「薬師の瀧湯」と「天狗の瀧湯」は、湯畑の下に瀧のようにお湯が落ちるところがあり、今は広場となっているが、昔はそこに17本の打たせ湯があったそうだ。うち12本が「薬師の瀧湯」2本が「天狗の瀧湯」、3本が「不動の瀧湯」と呼ばれており、大変人気で、1日待っても入れない程であったとされる。この瀧湯は残念ながら昭和47(1972)年に取り壊されてしまっている。

他には

その外熱のゆ脚気のゆわたのゆなどいうなり、またむかし頼朝公の浴し給うという、御座の湯というもあり。

と紹介されている。

さて、今回なぜこんな「続膝栗毛」の話を書いたかというと、実はここに書かれた共同湯のいくつかが、現在もまだ残っているのだ。残っているのは、熱の湯、御座の湯である。熱の湯は今はゆもみの見学所となっているため入浴はできない。ただ、御座の湯は、今は「白旗の湯」という名前で入ることができるのだ。ちなみに、最近出来た建物に「御座の湯」というのがあるため、紛らわしいが、そちらも良い湯である。

頼朝公が入り、膝栗毛にも書かれた、「白旗の湯(御座の湯)」、温泉好きとしてぜひ入って見たいと思った。

白旗の湯は共同浴場なので、無料で入ることができる。

少しがんばって早めに起きて、日曜の7時、温泉に入った。中は一人暮らしの学生のワンルームのような広さ、脱衣所と、正方形の湯船が2つ分かれてあり、源泉が惜しみなく掛け流されている。天井は高く、浴場は湯気がかなり立ちこめている。それもそのはず。一つの湯船がとてつもなく熱いのだ。そうとも知らずに最初に入ったものだから、左足がやけどするかと思った。この熱さが草津温泉の湯の特徴である。効能を弱めないよう、加水しないで温度を下げるために、湯畑があり、木で温泉をかき混ぜるゆもみあるのだ。ゆもみで温度を下げた後でもまだ熱いから、全員で一斉に湯に入り、その時間を区切る時間湯という方法も生まれた。ゆもみも時間湯もできない僕はすぐにその湯船から出て、もう一つの湯船に入る。こちらはちょうど良い湯加減。強酸性の濁り湯は本当に肌と健康に良いんだろう。温泉を出た後の保温効果と肌のつるつるになったことが実感できた。足下まであったまり、そのため旅館に戻った時にスリッパを履き忘れても気づかない程だった。

すっかりほっこりして家に帰ることができた。また今度はゆっくり何日間か滞在し、草津の温泉を心ゆくまで楽しみたいと思う旅だった。