katonobo’s blog

仮想通貨✖プログラミング

ビットコインをめぐる冒険 :1

平凡な人生だと思っていた。高校生だった僕は、学校が終わるといつものようにVRゲームに没頭していた。

 

部活はやっていない。人と一緒に何かをやるのは苦手だった。

 

現実なんてクソ喰らえだと思ってた。毎日学校に行って、帰ってきたらゲームをやる。なんの刺激もない、退屈な毎日。

両親は共働きで、帰ってくるのはいつも遅かった。二人は、僕に全く興味がないようだった。こんな人生がずっと続くなんて本当に退屈だ。

 

いや、退屈だった。

 

突然人生は動き出す。それはまるで、大きく重い列車が動く時、最初は全く動かないのに、一度動き出してしまえばどんどん加速していくように。

 

僕の人生が大きく動き出したのは、彼女がやってきた日だった。

 

いつものようにゲームをやっていたら、家の玄関のチャイムがなった。VR画面に割り込んできた表示が、来客の事実を僕に伝える。

両親は共働きだから、この時間は自分しかいない。いつもは無視をするのだが、その時はなぜか出なくてはいけないような気がした。

VRヘッドを外し、階段を降りる。ドアの向こうに人が立っているのが曇りガラス越しに見えた。シルエットで女性だとわかった。

ドアを開けると、そこには細身で黒のパンツスーツを着た女性が立っていた。立ち姿には全く隙がなく、一瞬、百貨店のマネキンを誰かがここまで運んできたのかと思った。

いや、間違いなく生きている女性だ。歳は20代前半くらい。

立ち振る舞いからマネキンを連想したのだが、それと同じくらい彼女の顔はとても美しく整っていた。

すぐにドアを閉めようと思っていたのに、その女性の美しさに見とれて、僕はドアを開いた姿勢のままで硬直してしまった。

彼女はしばらく僕を見ていたが、「了解」とだけ小さい声で呟くと、僕に喋りかけてきた。

 

「初めまして。私はタカナワと申します。急な訪問で大変申し訳ありません。時間がないので手短に申し上げます。私は、あなたを守りにきました。」

 

 

守る?誰を?

 

僕は冷静なふりをして、彼女に聞いた。

「えっと?あなたは誰ですか?守るってどういうことですか?」

 

彼女は僕の質問に答えずに言った。

「ショウ様。あまり時間がありません。付いてきてください。移動しながらお話いたします。」

彼女は僕の腕を掴んで、僕を家の玄関から引っ張り出した。靴だって履いていない。

 

家の向かいの道路に止まっているピカピカの黒塗りの車が見えた。この車で移動するようだ。

 

僕は彼女のあまりの強硬な態度にドギマギしながら思った。

 

なんで僕の名前を知ってるんだろう?知り合いだっけ?

 

あれ?

これってナチュラルに誘拐されそうになってるのでは?

 

 

そう思ったらサァーと血の気が引いた。逃げなきゃ。

 

僕はタカナワと名乗った女性の手を解いて逃げようとした。

とにかく手を振りほどいて、家に入って鍵を閉めなくては。

しかし、彼女の僕の腕を掴む力は思った以上に強かった。振りほどけない。

 

彼女と僕の目が合った。

彼女の目が恐ろしく冷たくなった。

 

彼女はいきなり僕を押し倒してきた。

すごい力だった。

彼女も倒れてきて、僕に覆いかぶさってくる。

 

彼女に殺される。と僕は思った。

 

次の瞬間、目の前が光った。

耳に何か強い衝撃が走る。それは爆音だった。

あたりを見渡すと、道路の向こうにあった黒塗りの車が燃えている。

 

彼女はこの爆風から僕を防いでくれたようだった。

タカナワに引っ張り起こされた。

彼女が何を叫んでいるが、どうやら僕に向かって話しかけているのではなく、どこかと通信しているようだ。

 

彼女が僕を家の玄関の中に押し込んだ。そしてふたたび彼女だけ外に出ていく。

 

僕は玄関で丸くなって震えることしかできなかった。財布だけ持ってこようか?とか、とりあえず靴だけ履こうか?とかも少し考えたが、考えがまとまらず、どうすることもできなかった。

 

どのくらいの時間だったのかわからないが、玄関のドアが開いた。

 

ドアを開けたのは、タカナワだった。

 

「敵は排除しました。しばらくは大丈夫だと思いますが、ここは危険です。移動します。」

 

敵?やっぱり攻撃されたのか。

 

しかし、あれだけの爆風を受けたのに彼女の髪は一切乱れていないし、先ほどと同じように彼女のスーツはどこまでも正しく整えられている。

 

どうすればいいのかわからない。けど、こうなったら彼女は何がなんでも僕を連れていくだろうし、彼女は僕を守ってくれるとは言っている。

 

僕は彼女についていくことにした。

僕は彼女に頷いてみせた。ただ、腰が抜けて動けない。

 

腰の抜けた様子に気づいたタカナカは、僕に手を差し出した。

 

「タカナワさん。これからどこにいくんですか?なぜこんなことになってるんですか?」僕は彼女に腕を引っ張られながら聞いた。

 

彼女は僕の目をみて、しっかりとした口調でこう言った。

シュウ様。あなたは、サトシナカモトの子供です。そして、あなたがサトシナカモトの財産、すなわちビットコインを引き継いだのです。」

 

突如現れた謎の女性のこの言葉から、平凡な僕の人生が一変した。